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羽生浩一 Hanyu Koichi 教授
平和とジャーナリズム
 
私のテーマは、ジャーナリズムおよび情報・宣伝活動がいかにソフトパワーとして「平和構築」に貢献できるか?ということです。
近年、ジャーナリズムは危機にひんしている、ともいわれています。 「社会の公器」「権力の番犬」ともいわれるニュースメディアが、市民から「敵視」または「無視」されるなかで、同時にその反動で、個人レベルで情報を発信可能とするニューメディアを無批判に信頼、依存して行くように見える昨今の状況は、一見「声を持たなかった市民」たちがその発言の影響力を持ち始めることで、民主主義の理念に適うように思えて、ある種の無法地帯をうみ、私たち市民が言論の自由を手放すことをよしとしてしまう危険性も孕んでいます。
メディアと私たちの関係を捉えなおすこと。そしてそれを手掛かりとして地域社会から地球社会へ、メディアを通したジャーナリズム、情報宣伝活動が、平和秩序の構築において、どのように貢献出来るのかを考えて行きたいと思います。

プロフィール

学位: 修士
専門テーマ: 平和とメディア、広報外交、ノーベル平和賞、差別と社会的マイノリティ
専門分野: ジャーナリズム、国際政治学、文化社会学
最終学歴: 早稲田大学政治経済学術院政治学科博士課程後期
文部省派遣第1回アイスランド政府奨学金留学生(1989年度)
ノルウェー王国政府奨学金留学生(1995年度、オスロ大学社会学研究所)
国内外長期研究派遣(2015年度、臺灣・国立政治大學臺灣史研究所)
職歴: 日本放送協会報道局ディレクター等を経て、2006年度より東海大学に赴任
所属学会: 日本マスコミュニケーション学会 他
研究キーワード: Journalism, Media Studies,Peace Studies, International Political Science, Nobel Peace Prize, Public Diplomacy, Soft Power, Freedom of Speech, Cultural Sociology, Minority issues
主な論文・著書:
「ジャーナリスト・駱文森の個人史からみた 台湾・日本統治時代から民主化時代への軌跡(上・中・下)」(オーラル・ヒストリー研究、「情報化社会とメディア研究」、第12巻〜第14巻、2016〜2018年度)
「ノーベル平和賞と冷戦の三年間 〜 オーセ・リオネス委員長の改革と挑戦」(論文、「Intelligence」16号、2016年03月)
「外交機密文書から見た、佐藤榮作ノーベル平和賞受賞と『二つの中国』問題」(論文、「東海大学紀要文学部」第102号、2015年03月)
「ノルウェーを知る60章」(単行本、共著、「ノーベル平和賞 変貌する国際社会で平和を提唱し続ける民間の賞」を執筆、2014年8月、明石書店)
「イスラエルの広報外交による国家イメージの変革 ―性的マイノリティの人権問題をめぐって」(研究ノート、「文明」(東海大学文明研究所)、18号。2014年3月)
「日本の主要全国紙による中国報道のニュース・ソース分析」(論文、「東海大学紀要文学部」、第98号、2013年3月)
「原発事故を米軍“準機関紙”はどう伝えたか Stars and Stripes紙の報道内容分析から」(論文、共著、「情報化社会とメディア研究」第9巻、2013年3月)
「意図された「誤断」/佐藤榮作・ノーベル平和賞を読み解く三つの視点」(論文、「情報化社会とメディア研究」第6巻、2010年3月)
   
他に放送ジャーナリストとして制作に携わった番組多数
 

研究テーマについて

社会性

ニューメディアとジャーナリズム

2011年、長期にわたって独裁政権を維持して来た中東や北アフリカの国々で、「ニューメディア」を駆使した市民たちが、政権交替を加速させて行きました。市民が発信する情報やニュースが短期間で世界を変えて行く状況をわたしたちは目の当たりにしました。しかし第二次大戦後メディアとして最大の影響力を誇ったテレビジョン、そして他のメディアの役目が終わった訳ではありません。むしろ、マスメディアと市民の関係が変わり、多様なメディアが融合することで、新たなメディアの利用・存在価値が生まれ、ジャーナリズムの可能性が期待される、そして私たちの社会的な生活にも影響を及ぼしてくる、いまはそんな時代の過渡期ではないでしょうか。その背景のなかでメディアと平和構築について、いま考えていくことは、大きな意味があると思います。
研究の特異性

メディアとしての「ノーベル賞」を読み解く

目下の具体的な研究テーマのひとつは、みなさんもご存知の「ノーベル平和賞」についてです。なぜ「ノーベル平和賞」はいわゆる「平和広報メディア」として今日の地位を築くことが出来たのか?賞の歴史やその意義、個々の授賞ケースについての研究はこれまで主に欧米では行われてきましたが、情報宣伝メディアとしての読み解かれ方はあまり行われていません。
この賞が北欧の小国・ノルウェーで始まって110年あまり。その授賞史をひもとくと、ヨーロッパにおける「世界観」の移り変わりや、その時代ごとの「政治性」が常に色濃く反映されています。また平和を謳っていながら、必ずしも「中立」ということではありません。毎年10月の授賞者の発表では世界中のメディアがこぞって報道し、授賞について賛否の議論が起きています。そして当然メディアを介したニュース的価値は非常に高い。しかし、なぜ私たちは、ジャーナリズムはそこまで「ノーベル平和賞」にニュース価値を見いだすのか?何がこの賞の価値を高めたのか?人類の平和への希求に、この賞はこれまで何をなし得て来たのか?
いまや世界最大の「平和広報メディア」となった「ノーベル平和賞」をメディアとして読み解くことからをまず手始めに、メディアがどのようにソフトパワーとして平和構築、維持に機能できうるのかを明らかにし、今後はイギリスやアメリカなどの情報戦に長けた国々、言論の自由がまだ保障されていないアジア諸国なども研究対象にして行きたいと思います。
研究の楽しさ

世の中、ナナメ読み

私にとって研究の楽しさとは、一見、他人がつまらないな、あたりまえじゃない、と見過ごしていることを拾い上げ、それを突き詰めてその意義を明らかにし、社会的な意味のある成果へと発展させて行くことです。その発想と過程で、改めて自分や見えていなかった世界を再発見することもあります。それが研究の醍醐味ではないかと思います。 目下の研究対象のノーベル平和賞は、私がかつて留学していた北欧ノルウェーにある、ノーベル平和賞財団が授与しています。私は北欧の文化と自然、社会に深い関心と愛着があり、都合三年ほどかの地に留学し、いまでも年一度は研究のため訪れています。自分が好きな地に関連のあるテーマで研究できることは大きな喜びです。

ゼミ・教育について

ゼミの教育姿勢

”あたりまえ”の殻を破る

毎セメスターで個々のテーマや方法論は変えていますが、まずは、世の中の“あたりまえ”を疑うところから、自分のこの世界での立ち位置を確認し、自分とは何なのか、自分と世界との、他者との関係を捉えなおしてもらうことから始めています。
ともすればインターネットなどから、玉石混淆の情報だけはふんだんに得られる時代です。コピペはいまの若い人たちには犯罪の意識もなく広がっています。しかしそうした雑多なメディアから得た情報から、あえて一度離れて、ひとつのことを愚直に、真摯に突き詰めること、考える、議論する。そして自分の問題意識に向き合うことから、社会的に価値のある情報は生み出される、と私は考えます。
学生の学びを後押しするために、能動的な知的活動として幅広いジャンルの読書を課すことを始めとして、生の刺激と経験を深めてもらうための諸活動など、きっかけ作りと支援を行っています。
学生
多種多様な学生が集まっています。これまでのゼミの学生たちを見てみると、素直で誠実な学生は伸びしろが大きいと思います。
ゼミの学生の進路は、マスコミ、映像制作会社、IT企業、大手小売業、運輸業、サービス業、エンターテイメントなど、さまざまです。
卒業研究テーマ
<個人研究テーマ>
  • 「共生社会の実現を目指す〜『共生ネット』の活動」
  • 「待機児童と戦う企業」
  • 「DVをなくすために〜“加害者”のアフターケア」
  • 「企業側からみた就職活動」
  • 「青少年犯罪と更生について〜小田原少年院への取材から」
  • 「『ノルウェーの森』のメディアにおける表現の違いと意味」ほか
<合同テーマ:映像作品>
  • 「差別問題をテーマとした映画『オーバー・ザ・レインボウ』制作」
  • 「東海大学陸上競技部主将・塚原直貴ドキュメンタリー」 ほか
ゼミの魅力
多様な興味を持つ学生が集まります。基本的に、本を読んだり、課題を発表したり、現場に出かけたり、議論したり、時には諸活動と並行して映像作品を制作したり、と割合に忙しいゼミです。定員を最大12名程度とし、教員と学生がきちんと向き合える学びの環境を維持しようと努めています。もちろんオフ会も楽しく(笑)。また、長年国内外の現場で活躍して来た経験から、目先の就職活動の動向等にとらわれない、実践的な就職相談も希望者に行っています。
その他一言
10年ほどに及んだ英国滞在時、住居からほど近くに世界遺産に指定されているグリニッチ歴史地区がありました。そのテムズ川に面した一角に、19世紀の紅茶貿易で世界の海を巡った帆船「カティ・サーク号」が保存展示されています。ある日、その帆船の舳先のプレートに、小さな文字で刻まれている文章を発見しました。

Where there is a will, there is a way.
(意志のあるところに、道はある)

私が折あるごとに思い出す、好きな言葉です。あらゆる危険が潜んでいる大海原を突き進む船体の最先端に掲げられたこの言葉は、もともとは中国の故事が典拠とか。
夢をあきらめ、迷い続けるより、人より強い思いがあると信じられるなら、小さな勇気をもって、まずは一歩を踏み出そう。道は自ずと拓けてくる。そう語りかけてくるような力強さを感じます。
社会という大海原に出る前に、大学でどんなことを学び、身につけたいのか、そしてそれをどう活かしていきたいのか、意志と展望を持って、大学生活をスタートさせてください。

入学をお考えの皆様に向けて

湘南キャンパスでは自然が豊かでのびのびとした環境の中で、多様でかつ面倒見の良い教職員の支援を受けつつ、メディアやジャーナリズムについて学ぶことが出来ます。ここに来れば何かを与えられるだろう、という漠然と受け身でいるのではなく、ある程度明確な目的を持って、自分で模索しながらでもがんばっていこう、という学生は、大学生活を充実させています。
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