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加島卓 Kashima Takashi 准教授
広告制作者の歴史社会学
 
広告やデザインにはその制作者の名前ではなく、クライアントの名前が書き込まれるという、浅そうでそれなりには深いかもしれないことを社会学的に研究しています。このように「近代的個人」と「近代組織における個人」という二つの理念型を揺らぎ続けることでしか現象しない〈広告制作者〉という職業を対象に、言説の歴史社会学という方法から、日本における「近代」の動き方を描こうとしています。誰かに命令されているわけではないのに、自分たちで一生懸命考えれば考えるほど、どこかおかしなことになってしまう。そんな「近代」を粘り強く考えていくことが、私の研究テーマです。

プロフィール

学位: 博士(学際情報学、東京大学)
専門テーマ: 〈広告制作者〉の歴史社会学
専門分野: メディア論、社会学、広告史・デザイン史
最終学歴: 東京大学大学院学際情報学府博士課程
所属学会: 日本マス・コミュニケーション学会、日本社会学会、関東社会学会
研究キーワード: 近代、メディア、消費社会、デザイン、アイデンティティ
主な論文・著書:
『〈広告制作者〉の歴史社会学:近代日本における個人と組織をめぐる揺らぎ』せりか書房、2014年、日本社会学会第14回奨励賞受賞
『文化人とは何か?』(南後由和と共編)東京書籍、2010年
「縦長店舗と横長店舗」+「順路なき巨大な展示空間」、近森高明+工藤保則(編)『無印都市の社会学』法律文化社、2013年
「つながり」で社会を動かす」+「メディア・リテラシーの新展開」、土橋臣吾・南田勝也・辻泉(編)『デジタルメディアの社会学』北樹出版、2011年
「美大論」+「ユーザーフレンドリーな情報デザイン」、遠藤知巳(編)『フラット・カルチャー:現代日本の社会学』せりか書房、2010年

研究テーマについて

社会性

メディア・リテラシーとワークショップ

社会連携に関わる研究としては、東京大学大学院情報学環メルプラッツや武蔵野美術大学芸術文化学科アーツプロジェクトのメンバーとして、メディア・リテラシー実践や芸術・デザインを活かした市民参加型のワークショップを行い、専門家と非専門家のコミュニケーション・デザインや地域活性化の支援などを行っています。
研究の特異性

「私でなくてはできないこと」と「他の誰でもできること」

広告やデザインは「制作物」として研究されることが多いのですが、私は「制作者」という点に注目し、前者について語ろうとすればするほど後者があっさりと消えてしまうことが面白いなと思っています。「作者の研究がしたいんですか?」と聞かれることが多いのですが、それはちょっと違います。独創性と官僚制という二つの近代の揺らぎ、わかりやすく言えば、「私でなくてはできないこと」と「他の誰でもできること」が循環してしまう職業として社会学的に記述していくことが、私の研究の特徴になります。
研究の楽しさ

コミュニケーションにおける「殺し文句」とは何か?

私の研究論文は「読みにくい」と言われます。しかし、わかりにくいことをわざわざわかりやすく書くことと、わかりにくいことをそのままに書くことは、基本的に別ではないでしょうか。こういうややこしい言い方をするのは、私自身が研究において「感性が大切!」とか、「それはセンスの差!」といったコミュニケーションにおける殺し文句を扱ってきたからです。殺し文句で安心してしまうのではなく、それによって何が言われ、また何を言わなくてもよいことになってしまったのか、そういう複雑さと真面目に向き合えば、わかりやすくは書いてしまえない点こそ面白いと思うのです。

ゼミ・教育について

ゼミの教育姿勢

ハイテンションにならなくてもよい場所

広報や広告と言えば、それらに対する実践的なアプローチが注目されやすいです。しかし、それらには決定的なものはないというか、またそうだからこそ、次々と新しい試みが生まれては消えていきます。もちろん、こうした努力には敬意が払われるべきですが、そもそもの状況認識がズレていると、終わりなき対応になってしまうこともあります。そこでゼミナールでは、個別のアプローチというよりは、その前提の捉え方を学んでいきます。そして、無暗にハイテンションにならなくても、実直に広報や広告に取り組んでいけるような教養と責任を身につけていくことを目指しています。
学生
ゼミナールの前半は文献講読を行い、後半は個人テーマの報告を行います。また、三年生までは自分自身の問題意識が何であるのかを明確にする作業を中心に、四年生には問題意識に基づいた論文執筆や作品制作を中心に指導しています。さらに、ゼミ合宿や社会見学、懇親会なども行い、親交を深めていきます。
卒業研究テーマ
  • 「自分が好きなことは、他者も好きになれるのか?」
    (2010年春学期の全体テーマ)
  • 「自分の中高生時代を「平成日本の歴史」として書く」
    (2010年度秋学期の全体テーマ)
  • 「フラットな日常とは何か?」
    (2011年春学期の全体テーマ)
  • 「都市はいかにして「都市」なのか?」
    (2011年秋学期の全体テーマ)
  • 「日本社会にとって「若者」とは何か?」
    (2012年春学期の全体テーマ)
  • 「私たちは何をいかに「信じる」のか?」
    (2012年秋学期の全体テーマ)
  • 「フラットな感覚とは何か?」
    (2013年度春学期の全体テーマ)
  • 「都市・郊外・戦後日本の二周目」
    (2013年度秋学期の全体テーマ)
  • 「若者のすべて」
    (2014年度春学期の全体テーマ)
  • 「書店の都市論」
    (2015年度春学期の全体テーマ)
  • 「都市と商業空間のフィールドワーク」
    (2015年度秋学期の全体テーマ)
  • 「若者と小商いの社会学」
    (2016年度春学期の全体テーマ)
ゼミの魅力
他者の声にじっくりと耳を澄ましつつ、結局のところは、わかり合えないということしかわかり合えないことを、反省的に引き受け続けること。意見と人格を区別して、多様な他者と何度でもプロレスしていこうとする点に、ゼミナールの魅力はあります。
その他一言
もし「大学で何を教えているのか?」と聞かれれば、「社会には決定的な解答がないこと」と答えます。決定的な解答に至るまでを教えるのではなく、一般に「解答」と呼ばれるものの不確実さを知り、それとどのように付き合い続けられるのかを訓練するのが大学です。「終わっている…」と言うこと自体が終わっているからこそ、全てを投げ出してしまうのではなく、そのどうしようもなさを少しでも引き受けようとする誠実な学生との出会いを楽しみにしています。

入学をお考えの皆様に向けて

広報メディア学科の面白さは、3つあります。1つには、学科で勉強することがそのまま社会で役立つ知識や技能になっているという点です。2つには、多くの教員がメディアの現場などで働いていた経験があり、また学生の活動も社会で数多く評価されている点です。3つには、学問にはすぐに役立たないところがあるにもかかわらず、なぜかその存在自体は信じられてしまうことへの不思議さに迫る知的な豊かさに触れられるという点です。これらの3つを通し、1つの職能を極めるというよりは、多様な他者と連携しながら比較していく力を身につけられるのが、広報メディア学科の魅力です。
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